多重債務者が破産状態に陥る前に経済的再建を図るため、一般的にはあまり知られていませんが個人民事再生手続きという制度があります。これは裁判所へ申し立て、債務額の一部を分割返済することを条件に、残りの債務を免除してもらう手続きです。その制度を用いた一つの例が、今回紹介する52歳の会社員Yさんの事例です。
Yさんは長年、営業マンとして身を粉にして働いてきました。営業経費で自腹を切ることも珍しいことではなく、毎月の給料では足りないときには、銀行や信販会社からの借入金で賄っていました。
そのような借入れが恒常化していたYさんは、6年前の46歳のときには、毎月18万円以上の返済を強いられるようになっていました。ただ、月収が手取りで50万円程度あったため、さほど苦しい状態ではありませんでした。
その後、47歳のときに、Yさんは頭金を親戚から借り、月々17万円の住宅ローンを組んでマイホームを購入しました。月収50万円のうち、住宅ローン以外の借金と合わせて毎月35万円が、返済で消えていきます。さらに、就学中の2人の子どもの教育費により、かなりの無理を強いられることになりました。
そして、2年前に早期退職し、知人から誘われたベンチャー企業に再就職しました。そのときの退職金で親戚にお金を返し、住宅ローン以外の借金を多少減らすことはできましたが、不景気のあおりで昨年から収入は激減したため、今度は生活費のために、借入れをするようになりました。。
結局、当事務所に相談に訪れたときのYさんは
月収30万円という明らかな債務超過に陥っていました。
住宅ローンを含む借金の返済、毎月32万円
(住宅ローン17万円、銀行・信販会社15万円)
借金のために膨らみ続ける借金、破綻はすぐそこまで来ていました。
| 債務総額:4,500万円(住宅ローン残高約3,700万円 銀行・信販会社 約800万円) |
債務総額:400万円 |
Yさんは、銀行や信販会社など金利が低い債権者から借りていたため、借金を減額することはできず、任意整理を行うには難しい状況でした。
Yさんには、できる範囲で返済を続けたいという意思があったため、個人民事再生手続きの一つである「小規模個人再生」を選択しました。「小規模個人再生」の手続きを行う場合、借金が5,000万円以下であり、継続的に安定した収入が見込めること、という条件がありますが、Yさんはその条件をクリアしていました。
個人再生の手続きでは、住宅ローン特別条項を活用することによって、マイホームを維持しながら債務整理ができます。ただし、住宅ローンについては債権のカットはなく、利息の免除もありません。住宅ローンを払えなければ、結局、住宅を手放すほかありません。
Yさんの場合も、住宅を維持する方向で、まず債権者に弁済計画の見直しを依頼しましたが、2年前と3年前の収入は高かったため、応じてもらえませんでした。。
他の借金が減額されるとはいえ、生活費・教育費を考慮すると、月額17万円の住宅ローンを払い続けるのは困難なため、自宅を売却し、住宅ローンの残金も再生債権に含めて「小規模個人再生」を申し立てることにしました。
住宅ローンはオーバーローン状態だったため、抵当権者との交渉は必要でしたが、自宅を2,500万円で売却することができました。その結果、住宅ローンの残債1,200万円と銀行・信販会社の800万円の合計2,000万円を、民事再生法の規定に基づき5分の1に減額し、400万円の債務を3年間で返済する再生計画案を作り、裁判所に申し立てを行いました。。
申し立てから半年後、再生計画が認可され、毎月32万円だった返済は、弁護士費用を含めても約16万円にまで抑えられました。







